悪の教典 下 (文春文庫 き 35-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年8月3日発売)
3.72
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感想 : 1253
3

貴志祐介である。
嫌悪感も超越して、爽快感か......

上巻から一転、スピード感を持って一気にクライマックスへ進む。

蓮実聖司という男の言葉には力がある、ということは読んでいて納得。こんな先生ならそりゃ人気あるに決まっている。

蓮実の生きる世界は蓮実の為にあるべきである。
彼は自らの生きる世界を求め、奔走することになる。

蓮実は最後に笑っているのか。
メッキー・メッサーのモリタートの口笛が聞こえる。

以下ネタバレ有り(備忘録)

P.176~
行き過ぎた行為は自らを破滅に向かわせた。
蓮実の行動と思考が極限の方向へ進んでゆく。
彼の頭の中で可能性と不可能性が見え隠れし始めた。

読者としても、まさか全員を殺すことになってゆくとは、展開として直球にもほどがある。

伏線回収などの目立った見所はなく、ただただ殺戮が行われてゆくシーンが大半を占める為、驚きというもは少なく、惨たらしい描写は十分にムカムカさせてくれる。
知的で冷酷な蓮実のイメージとは違う展開には、違和感があるのは否めない。なんだかな。

下鶴刑事に関しては、ぐいぐいストーリーに関与して来るだろうと予想したが、蓮実の悪事のお膳立てに徹した設定に留まった。

また保健室の先生である田浦潤子も少し謎めいている。
恐らく、蓮実の狂気を少なからず感じていたに違いない。

生き残ったのは3名。片桐 怜花、夏越 雄一郎、安原 美彌。彼らにとってあの一日とは。
最後に、蓮実が逮捕されるまでの数ページに期待をしてはいけない。彼の全ては奪われるのだ。
口笛を吹きながら。

追記:
巻末の章については、読了後にネットでレヴュー等を参照している際に、見解を出されている方がいた。
なるほど、過去の高校の生徒である、佐々木麻美、栗栖こずえ、中嶋晴。
こずえが蓮実を好きにならないように先手を打った麻美という生徒。今作の事件からトラウマのように蓮実を恐れる少年。
『開くの、今日、十時(テン)? 』
何を言うとんねん。

読了。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年1月19日
読了日 : 2021年1月19日
本棚登録日 : 2020年10月31日

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