猫に時間の流れる (中公文庫 ほ 12-6)

著者 :
  • 中央公論新社 (2003年3月1日発売)
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感想 : 36
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「猫に時間の流れる」と「キャットナップ」を収録。
保坂さんが、人間ではなく猫中心に描いたという、「猫に時間の」の方が、今回は読んでて心地よかったのは、猫好きでもなんでもない私にとっては不思議だった。作中に出てくるクロシロという猫の存在が大きかったんだと思う。ただ、かわいい、とか、愛らしい、とかいう猫よりも、ちょっと癖があって、悲哀があって、汚らしい匂いが届いてくるような猫っていうのは、ひっかかってくるもんなんだなあ。

p41 美里さんのつきあっていた男とちがって弘美はぼくと美里さんのことをいっさいカンぐらなかったが、それから何ヵ月もしないうちにぼくは彼女にフラれた。理由は美里さんでも猫でもない。フラれることにはっきりした理由が必要なのかどうかもよくわからないが、ぼくはとにかく女の子と長くつき合おうとしない何かがあるのかもしれないと思う。ぼくは弘美というその子と会えなくなったのがしばらく残念でフラれる直接のきっかけになった事件さえ起こっていなければまだしばらくはつづいていたはずだ、もしかしたらずっと何年もつづいたかもしれない、もう弘美を好きになったようには誰かを好きになれないかもしれない、なんて思っていたが案外短期間で新しく好きな女の子ができた。そして美里さんにも新しい恋人ができたのだけれどこれがまた妻子持ちだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年7月16日
読了日 : 2014年7月15日
本棚登録日 : 2014年7月15日

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