マスカレード・イブ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2014年8月21日発売)
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「マスカレードホテル」に続くシリーズ第2作目。順番としては続作になるが、タイトルにある『イブ』からもわかるように、内容は前作「マスカレードホテル」の主人公2人・新田浩介と山岸尚美が出会う前のそれぞれの話しである。

私は、フロントクラーク・山岸よりも刑事・新田の方にどちらかといえば思い入れがあるので(スクリーンでは、新田役は木村拓哉さんで、ハマっていると思ったのが理由)、今回2つ言いたいことがある。

1つ目は、なんと言っても仕事の足を引っ張る彼女の存在。
2つ目は、理解、配慮に乏しい生活安全課の穂積理沙とペアを組むことになったこと。
理沙に『お願いだから、足は引っ張らないでね』と終始祈る気持ちでページをめくった。

本作のキーワードは、公式サイトで以下の通り。
「尚美が気づいた、昔付き合っていた彼の仮面」ー『それぞれの仮面』
「新田が騙された女の仮面か。」ー『ルーキー登場』
「お客様の仮面を暴いてはいけない。」ー『仮面と覆面』
「アリバイという仮面を暴け。」ー『マスカレード・イブ』
(集英社 マスカレード特設サイトCMより)

本作に共通するキーワードは、『仮面』。 
(これはシリーズを通して共通するキーワードだ。だから、全ての表紙に仮面が描かれている。)

人は確かに仮面をつけている。ただ、私の考えとしては、一人の人間において多種多数の仮面を持っていて、遭遇している状況、例えば、対人、環境、心理等により色々と仮面を付け替える。なので、ホテル用の(と、言っていいのかわからないが)仮面をら剥がすというのではなく、ホテル用に仮面を付け替えるイメージだ。
きっと、これは以前読んだ『分人』という考え方に影響を受けている。そして、そもそも作者が考える『仮面』の考え方自体が、『分人』と同じであると思った。でもそれは、それは『覆面』かもしれない。もし、素の自分を隠すと言う設定なら、『覆面』という言葉の方がぴったりとくる。そんなことに考えを巡らせ、仮面と人の心理について読みすすめたためにストーリーの展開を追っていくことよりも疲れてしまった。

一流ホテルは、宿泊客に非現実的な空間を提供する。宿泊客は、その非現実的な空間との勝負のために『仮面』を着けるのだと思う。私の場合であれば、それはホテルに入っ時に感じるあの緊張感のせいである。


それぞれの仮面
ホテルマン・山岸尚美とかつて付き合っていた宮原隆司がホテル・コルテシア東京に宿泊に来る。

ルーキー登場
ランニング中に料理教室を主宰する田所美千代の夫・田所昇一が殺害される。美千代に好意を持っていた料理教室の生徒・横森仁志を刑事・新田浩介が疑う。

仮面と覆面
正体未知の人気女流作家・タチバナサクラ(玉村薫)は高校生。中間試験と重なり執筆活動をホテル・コルテシア東京で父・玉村ソウイチと共に秘密時に原稿製作を行う。ファンの執拗な追いかけから逃れるための画策に尚美が活躍する。

マスカレードイブ
大学教授・岡島孝雄の殺害で准教授・南原定之が捜査線上に上がる。一方で、美容サロンを経営する畑山玲子の父・畑山輝信の殺害が未解決となっていた。2つの殺人の関係性を刑事・新田が暴く。

個人的には前作のマスカレードホテルの方が面白かった。ふたりがペアを組む前なので、ふたりの絡みがない。そのため、物語の展開は良しとしても、華やかさに欠けていると感じたからだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月14日
読了日 : 2020年8月14日
本棚登録日 : 2020年8月14日

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