春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年2月28日発売)
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感想 : 387
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人生の豊かさって、人との出会いなんではなかろうか?と、思えるくらいの本であった。

作者の作品は、動植物、自然を強く感じる作品が多いが、このエッセイは「人」を感じる作品で特に、「人の行動」がクローズアップされているように思える。人の行動は、十人十色であるが、それぞれの個を受け入れる(個に合意するとか、納得するという意味ではなく、いい意味で受け流すというか…)優しさを感じる。それがこの作者らしい透明感に繋がっているのではないかと、作者を垣間見た気持ちになる一冊であった。

特にイギリスには、3カ月くらい滞在していたこともあったのでとても懐かしかった。私いたところはブライトンからさらに西のボーンマスというところで、イギリスのリゾート地で、海が近く町がとても綺麗なところだった。当時は日本人がいなくて(今ならいるのかというのも知らないが)、ホストもはじめての日本人でなにかと気にかけてくれた。
そんなことを回想しながら読んでいると、ちょっとした描写に、そうだこんな感じだったと、こんなふうに接してくれたなぁと懐かしく感じる。

そして羨ましいのは、作者がそこで出会った害のない(?)個性的なキャラクターの人たち。特に古い友人であるウェスト夫人は、『受容する人』 と絶賛できるのいい。
こんな人たちとの出会いが、作者自身のあの独特な透明感を生み出したのではないかとまで思ってしまう。

本作を読んで、作者の今までの作品で『だからか』と納得するのと、これからの読む作品に対する予備知識ができたような気持ちになり、今までとは違った異なった感じ方ができるような予感がする。

そして自分の心の持ち方と放ち方について、とても参考になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月1日
読了日 : 2021年6月1日
本棚登録日 : 2021年6月1日

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