息子が殺人を犯した容疑で逮捕される。
我が子が加害者となった時、親として成すべきことは何かを問う、加害者の親の視点で描かれた物語。
著者作品は本作で3作目。
前読の「天使のナイフ」も少年法がテーマだったが、同じテーマでも被疑者と被害者の立場が異なるだけで、まったく別の重みを感じさせられた。
もしも我が子が被害者に、加害者になったなら…を想像しつつ、心が大きく揺さぶられた。
我々には必ず親が存在する。
たとえば、そこに複雑な事情があれど、親がいて、断ち切れない血縁があって今の自分が存在する。
よって誰しもが明日は我が身となる問題であると思う。
作中、主人公である父が、自身が幼少期についた嘘を親に見透かされていたことを知り、老父へ何故咎めなかったのかと問う場面がある。
「物事の良し悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」と即答する老父。
電撃が走った。
作中、殺人を犯した主人公の子どもが、殺人に至る動機を父へ語る上で、問う場面がある。
「心を殺すのと、体を殺すのとどちらが悪いことなの」
衝撃を受けた。
先般、DVDで視聴した湊かなえ作品【告白】において、私は以下感想を綴った。
『少年法に守られた子どもは、何人殺しても罰せられない制度は、はたして世の中にとって良い事なのだろうか。』
殺人は許されるものではない。
この考えに未だ迷いも揺らぎもない。殺人は悪だ。
ただ俯瞰するだけでなく、なぜ犯行に至ったのか。
加害者、加害者家族の事情・葛藤、これから一生背負い生きていく心の傷を、自分ごととして想像し向き合うことも必要ではないかと、改めて考えさせられたのも事実だ。
本作品は、加害者家族、被害者遺族の心理描写が細部にわたりとてもリアルに描かれている。
少年犯罪をテーマにした小説に興味がある方へ、是非ともお勧めしたい作品である。
- 感想投稿日 : 2021年9月12日
- 読了日 : 2021年9月12日
- 本棚登録日 : 2021年9月8日
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