火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1998年1月30日発売)
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感想 : 2965
3

妻を交通事故で亡くした休職中の刑事が
甥の依頼で突然姿を消してしまったという新妻を探すことになる。

甥と言っても希薄な関係性。
徐々に明かされていく女性の素性。
タイトルのせいだろうか。
気分の明るい読書にはならないと覚悟はしていたが
火車が引かれているという地獄へ
ゴトゴトと
引きづられて行っているような、
罪人との距離はずっとずっとあったはずなのに
火車が揺れるたびに、罪人の肩も、自分の肩も同じように
揺れているような気がして
恐怖ばかりが濃くなる一方だった。

いつか何か温かな結末にたどり着くのではないかと
小さな期待も虚しく闇の先は闇が待っているだけだった。

私たちの日常のすぐそばにある地獄の入り口。
あっけないほどすぐそばにあるその時代の闇の入り口。

ねっとりとした読後感。
救いは
主人公のそばにいる、聡明で優しい息子、頼りになる同僚。
自分のそばにも
目を向ければ
平穏な日常や
ささやかな笑いのある暮らしがある。
大切にしなくちゃなと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代文学
感想投稿日 : 2023年9月9日
読了日 : 2023年9月5日
本棚登録日 : 2023年8月16日

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