彼岸過迄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年1月22日発売)
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本棚登録 : 1833
感想 : 136
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冒頭に、漱石から読者へのメッセージがある。
彼岸過迄という、なんだか気になるタイトルは実は、単に正月から書き始めた連載がそれぐらいに終わるだろうと付けられた名前らしい。
そうなの、という気持ちで読み始めた。

そこには、短編を連ねて、最終的に大きな一編になる試みをすると書いてある。

話の語り手は、うまく流れにまかせて生き抜いていくタイプの青年。
探偵に憧れたり、まめまめと占いを信じたり、職探しも縁故に甘えて気楽に成功させている。

一方、真の主人公ともいえる、彼の友人はといえば、考えてばかりで、行動ができない。
その理由が最初の方から匂わされているが、そればかりが理由ではない。
自分の心とばかり向き合い、いまだ何の現実的なチャンスもつかめていない。
考えてばかりの自分がもどかしくて、気楽になりたい。

これを読んだ方は、どちらが自分に近いと思うんだろうか。

ワールドカップの時だけ、昔からファンです顔で現れる自称サッカーファンに違和感を感じてお祭りに参加できない私は、明らかに後者だろう。

そんな自分に時々しんどい人の心に優しくかたりかける漱石。
そして、能天気な青年の話も半分あるので、重さが緩和されて、前者のお気楽タイプにも読みやすい。

また、続編?の行人より、気楽な終わりなのも救われる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2022年2月18日
読了日 : 2022年2月12日
本棚登録日 : 2022年2月12日

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