100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

著者 :
  • 講談社 (1977年10月19日発売)
4.22
  • (1965)
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  • (24)
本棚登録 : 10822
感想 : 1383
5

Eテレでやっている『ヨーコさんの‘言葉’』が結構好きでテレビをつけてやっていたりするとよく聞いていたりする。聞くとザワザワしていた心がシンとしてフラットに戻れる気がするからだ。
そのヨーコさんのいわずとしれた代表作がこの絵本。
高校生の時買って、数年後弟に借りパクされてから(職場に持ってって共有スペースに置いておいたら誰か持ってっちゃったらしい)数十年。
他のブクログユーザーさんのレビューを読んだら、どうしてもまた読みたくなってしまい買ってしまいました。

今日届いたので早速読んでみました。
前と変わらないシンプルな装丁なので懐かしさで一杯になる。
前は「ちょっと絵柄がワイルドすぎて好みではない」と思っていたヨーコさんの絵がとんでもなく素敵にみえる。

昔読んだ本で、宮台真司さん?が「あれって囚人服だよね」と書いていたのを思いだし、この本の意味がちょっとわかった気がする。勘違いかもだけど。

誰も愛さないことは罪。
生まれ変わるのは罰。

自分も他人も愛せないからまた‘生まれて’‘死んで’しまうのだ。

ヨーコさんのこの絵本には仏教的思想がベースにある、というのも聞いたことがある。

仏教に明るくないのでよく分かんないんですが。

おはなしの内容ですが、まず何度も繰り返される「猫は○○なんか、大嫌いでした」の言葉に胸が切なくなる。なんで大嫌いだったんだろう。死んだら泣いてくれるのに。‘誰か’のものである猫生なんていらない、と思っていたんだろうか。
理由はないのだろうか。

百万回目にようやく‘誰のものでもない自分’になり自分を愛することを知る。

自分に自信がある立派な猫なのでモテモテになるが、‘自分‘が一番好きなので他猫を愛することができない。

「おれは100万回もしんだんだぜ。いまさらおっかしくて」

そこに現れたのが白いねこ。
とらねこの自慢に見向きもしない。

その白ねこの態度がまた天然?小悪魔(笑)

必要最小限の言葉と行動で自分大好きっこのとらねこの心を奪ってしまう。

とらねこの「そばにいてもいいかい」は最強のプロポーズの言葉ですね。素直で押し付けがましくなく本当に心から出た言葉って感じがする。

そしてラスト。
白ねこが死んで100万回も泣いたとらねこは後を追うように死んでしまい、‘もう生まれなく’なってしまう。

とらねこは‘罪’を許されたのだ。

百万回も生きたのに、本当に「生きた」のは最後の一回だけだったんでしょうね。

輪廻転生とか信じてないんですが、この絵本のおはなしにはグッとくるものがあります。

今度は死ぬまで手元に置こう(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2017年12月23日
読了日 : 2017年12月23日
本棚登録日 : 2017年12月23日

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コメント 4件

夜型さんのコメント
2017/12/23

こんにちは。
「100万回生きたねこ」。姉にプレゼントして、小生は読んだことがありませんが、貴殿のレビューを読んでふと思ったことがあります。
もしかしたら、主人公のニャンコは、何回も生まれ変わる輪廻の中に収容されていた”囚人”なのかもしれません。
愛を見つけることで、輪廻の獄から抜け出ることができた・・・て言う解釈です。
それにしても、ユニークで、なおかつ大事なことを教えてくれるよい絵本なのですね。

5552さんのコメント
2017/12/23

こんばんは、読書 猫さん。
コメントありがとうございました。
この絵本、いい本なんですよ~。
大泣きしました(TДT)
お姉さまにプレゼントされたとのこと。
喜ばれたでしょう?
私は逆に持ってかれましたが...(^^;
でも良い本なので弟の職場の人に読まれたかもしれないのは嬉しいことです。

読書 猫さんの解釈にはなるほどと思いました。
輪廻地獄、怖そうです。
‘死’を解放ととらえるのですね。

レビューには書きませんでしたが、とらねこは白ねこを愛してなかったら、‘永遠に’生と死を繰り返したのでしょうか。「一億回も生きたんだぜ。いまさらおっかしくて」とか言いながら。
どちらが幸せでしょうか。

あ、読書 猫さんはお読みになってないんでしたね。私の拙いレビューの情報だけ(他のレビュアーさんのレビューもお読みになってるかもしれませんが)というのは作者のヨーコさんにあまりにも悪いので、本屋で立ち読みでもいかがですか(^-^)
本が読めるって幸せなことですよね。
読めないときはほんとに読めないですし。

またお越しくださいね~。

えほんのむしさんのコメント
2018/02/02

5552さん、こんばんは。
コメントありがとうございました!
なかなか勇気が出ずコメントができなかったのですが、この機会に残していこうと思います。

誰も愛さないことは罪。
生まれ変わるのは罰。

この言葉にとても衝撃を受けました。
私も小学生の時に「ドリフの囚人服みたい」と思ってはいたものの、レビューにも書きましたが鈍過ぎて全く理解できませんでした。
それが二行で書けてしまうとは…
読書感想文を書くのが苦痛でしかないような人ですから、5552さんのように書けたらどんなにいいかと思います。
とっても羨ましいです!
めずらしくスムーズに書けた夏目漱石の『こころ』の感想文は、先生に「えほんのむしは変わった考え方をするね、面白かったよ」と言われる始末です(笑)
逆に一般的な意見がどうなのか聞いておけばよかったと今でも思います。
(当時の自分がどんな感想を書いたのか忘れましたが)
こんな変わり者でもよろしければ、今後もよろしくお願いします<(_ _)>

5552さんのコメント
2018/02/02

えほんのむしさん、こんばんは。

コメントありがとうございます!
誉められ慣れてないのでびっくりしてます。

『100万回生きた猫』
わたしも初めて読んだときは、「思ったより感動しないなあ」でした(^-^;
しばらくして宮台さんの発言を知り、「へー、そんな意味があったんだ~」と。
その後十年以上の時が立ちブクログをはじめました。
そして、えほんのむしさんのこの本のレビューをポチしてくれた方がいて、新着レビューに上がっていたんです。
読んでいた本だったので興味をもって読ませていただき、どうしても読みたくなって楽天ブックスで注文。クリスマスイブの前の日に届きました。
すぐに読んで書いたレビューです。

今まで忘れていたけど(笑)えほんのむしさんのレビューの投稿日からみてたぶんそうだとおもいます。
夜中に感動しながら他の方のレビューもポチポチ押しました。
遅ればせながらお礼を。
レビューを書いてくれてありがとうございました。

文章はコンプレックスがあって、高校生の頃文通相手に「5552ちゃんの書いてることはよく分からない」とぼやかれました(^-^;
今でも「これちゃんと人に見せられる文なのか?伝わっているのか?」と不安に思いながら投稿しています。
タブレットに「清書」されて載るとそれなりに見られるような気がしてくる(笑)ので、その誘惑に勝てないでいます。

そうそう、わたしも小学校の頃作文で先生に「ユニークな作文ですね!」と感想を書かれましたよ(^-^)
「私」と「テレビ」と「ビデオデッキ(DVD プレーヤーのようなもの)」が最近のアニメ事情を語り合うというものでした(^-^;
作文っていうか、妄想...?(笑)
喜んでもらえたから良かった、と思いましたが(ポジティブな小学生時代の私)
えほんのむしさんの作文への先生の感想もたぶん、誉めているんですよ。
「一般的」な感想はたぶん見慣れてらっしゃると思うので。
私は自分のレビューが「一般的」すぎる感想だ!とちょっと悩んでいるくらいなので羨ましいです。

長文になってごめんなさい。

こちらこそよろしくお願いしますm(_ _)m


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