江國香織、角田光代の名前に惹かれ手に取ったけど、やっぱりきつかった…。
"いじめ"がテーマですもの、そりゃ、ね。
中学時代、目についたものすべてに触れないと気が済まなかった。
いつもと違う順番で歯を磨いたらその日一日もうダメな気がした。
強迫観念のようにそれはつきまとい、二階の自室に入りベッドに入ってからまた一階に降り、触り切れなかったところを触ってから寝る、というようなことをしたこともあった。
当時は自分のお守りのような儀式だと思っていたけど、今ならわかる、相当心の病に侵されていたんだと。
本作の最初に収録されている江國さんの「緑の猫」に登場するエミもまさにそうだ。「制服が汚れていないか」日に何度も確かめたり、「蟻を踏んでしまわないように」下ばかり見て歩いたり、「どのくらいの頻度で瞬きをすればいいのかわからない」といって長いこと目を開けていたりする。
どれだけ長く吸って吐けばよいのか、呼吸の仕方すら分からなくなってしまっていた中学生の私を見ているようで、いたたまれない気持ちになった。
他の作家さんは、エンタメとしていじめを捉えているような節があり、なんだか遠い存在に思えてしまったが、江國さんの作品だけは、すぐそばに感じられた。
激しく見えるいじめも、その実、すごく静かだと私は思う。
いじめを受けたことのある人にしか、いじめをテーマにした作品を書かないでほしいと思ってしまう。あまりにも現実とかけ離れていたから。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2022年12月25日
- 読了日 : 2022年12月18日
- 本棚登録日 : 2022年12月18日
みんなの感想をみる