病弱な自分の健康を願うばかりに新興宗教にのめり込み、耽溺していく両親。子どもである主人公の視点からの日常が短く平易な文章で、淡々と綴られる。「こう読まれたい、受け取ってほしい」という作者の思惑をばっさりと破り去り、読み手に大きく委ねた勇気のある作品に思える。読み進むと、日常の幾重もの違和感。主人公の子どもにとっては日常で当たり前の状態。相対はない。それしかない。親は幸せを願っているのに、失う仕事、経済的基盤、周囲との繋がり等々の本末転倒の羅列。表面的には家族に食事も会話もある。通学も進学もする。
しかし、栄養の偏りや生来の感覚である空腹に本人が気づかない。子どもは自分では気づけないものである。何が充足で不足なのかを知って育つという点でもやはり家庭は大切と痛感。最後に、家族3人が同じ流れ星を探し続け、右往左往する光景は「幸せ」という「魔法の杖」を手に入れようと執着する両親の滑稽な姿に見えた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年1月22日
- 読了日 : 2018年1月31日
- 本棚登録日 : 2019年1月22日
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