M1

著者 :
  • 講談社 (2000年3月1日発売)
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S図書館 2000年
主人公は辛島武史、前職は商社、現在私立高校教師
生徒の黒沢麻紀の父の会社、黒沢金属工業の倒産から助けるため奮闘する

《感想》
「M1」とは、現金と預金の総量でマネーストックの指標
なんで高校生が出てくるのか?読むのをやめようかと思った
しかし、しばらく読んでいくと振興券が二重に印字されている辺りから急に面白くなってきた
やっぱり金融を書かせたら右に出る者はいない、実力派の池井戸氏
金融の複雑さが非常に面白かった

以下ネタバレ内容
下請けの協力会社は、町のドンみたい会社、田神亜鉛から振興券を買わされた
田神亜鉛は倒産するはずがないと思っている
しかしその実態は粉飾決算をしていて、実際は赤字会社だった
そして取引先を通しマネロンして、その金は暴力団に繋がり、計画倒産しようとしていた
振興券は紙くずになり連鎖倒産は避けられない状態になるだろう
実は田神亜鉛も利用されている側で、そのスキームを加賀翔子が仕組んでいた
その加賀も過去に暴力団に父を殺されたあげく、父の会社アトラス交易を乗っ取られた被害者だった
こんなややこしい感じだ
こんなこともありながら、要するに辛島は黒沢金属工業が持っている振興券を現金にできれば倒産を防げるということで奔走する

またトロッコ列車の枕木にぶら下がるアクションや、パイラビル鉱山、リチウム等の名称も飛び交うから面白さが倍増だ

最後に各々の会社の結論がまとめられている途中がわからなくても多分納得できると思う
考えてみたら地域振興券なるものも仮想通貨な訳で、信用がないと実は危ない
つくづく見えないお金になっていく世の中を憂慮してしまうな

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年12月1日
読了日 : 2023年12月1日
本棚登録日 : 2023年11月20日

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