虚ろな十字架

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  • 光文社 (2014年5月23日発売)
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最愛の娘が殺された。
金品欲しさに押入った強盗に、そこに居合わせた幼い娘は首を絞められて殺された。
犯人は最初の判決は無期懲役。しかし、被害者側の上告で犯人は死刑となった。
死刑という判決に、犯人は罪を償うという意識よりも、死刑はいつか自分に訪れる死が早まっただけだ、と考えた。

はたして死刑は、人殺しに罪を償わせるという意味を持つのだろうか。



娘を殺された小夜子は疑問に思う。

殺人犯を刑務所に〇〇年入れておけば真人間になる、という保証はない。
〇〇年という拘束の時間を、殺人者をそんな虚ろな十字架に縛り付けることにどんな意味があるというのか。

死刑は無力。
しかし再犯を防げるメリットがある。

どんな理由があろうとも、人殺しはみな死刑になるべきだ。


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自分の赤子を殺した過去の過ちを悔いて、自らが小児科医となり、難病の子供を助けてきた仁科史也。
樹海で自殺しようとした妊婦を妻とし、妻の夫も扶養し助けてきた。

彼は過去の罪に縛られ、人助けで自らの罪を償おうとしてきた人間だった。


殺人犯はみな死刑にすべし、という小夜子の思い。
はたしてそれは全ての人殺しに当てはまることなのか。

小説を読み終えて、いろんな意見があると思うが、とても考えさせられる内容だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年5月15日
読了日 : 2020年5月15日
本棚登録日 : 2020年5月15日

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