エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2009年5月20日発売)
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本棚登録 : 5506
感想 : 416
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恩田さんがあとがきで「「常野物語」のシリーズ三作目ということで非常に緊張した」と書かれていますが、他二作を相当意識されたのだと思います。特に「蒲公英草子」とは極端に世界観が異なります。「蒲公英」と対比させるかのように、現代・都会を舞台にし、登場人物を最小限に絞り、光のあたらない闇に蠢く世界を描いたのがこの作品だと思いました。

思えば一作目の「光の帝國」で私が苦手と思ったのが〈オセロ・ゲーム〉でしたが、この作品はまさにその長編でした。「光の」でも 裏返す という表現がどうしても頭にイメージできないままでしたが、この作品ではさらに 包む・叩く・洗う などという抽象的な動詞が追加になってさらに混乱。シリーズ外の「失われた地図」で、撫でる・押し込める・縫う なんて表現が出てきてこちらも困惑しましたが、恩田さんのこの手の動詞が出てくる作品はなかなか頭の中でイメージするのが難しいです。

一方で、この作品では「脳」という字が実に46ヶ所にも出てきます。「脳」と言っても色んなイメージが浮かびますが、「羊羹かパウンドケーキでも切り出したみたいに、綺麗な立方体の形に脳が取り出されていた」という感じのサラッとした表現が故に漂う不気味さにはゾッとするものがありました。

動詞は抽象的なのに、名詞は物凄くリアル。実に巧みな構成だと改めて思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸さん
感想投稿日 : 2019年12月20日
読了日 : 2019年12月20日
本棚登録日 : 2019年12月20日

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