何年かに一回ある、村上春樹が読者からのお便りに答えるサイトの書籍化。
人格というものは得体が知れなくて、暗闇の中にあって見えないし触れられず、対話や体験の共有によって投げたボールがその人からどう跳ね返るかによって大まかな輪郭を知ることができるだけだと思ってるんだけど、
人からの小さな疑問に答えるというコールアンドレスポンスを無数に繰り返すことで、小説を読むよりも村上春樹とはどんな人間なのか分かる気がする。
「陰謀論を信じるのは世の中が混沌としていることを自分の力で支えきることができないから、安易で簡便なフレームを導入してすっきりした気持ちになりたいだけ」
これがすごく良かった。陰謀論に傾倒する人は他者を害したいんじゃなくて、理不尽や不条理を受け入れられないからなんだな〜。
一番好きな回答は、「母を亡くした自分に『大変だったでしょう』と声を掛けてくる人は同情したいだけ」に対して、
「でも実際大変だったんじゃないですか?まわりの人はあなたをなんとか慰めたいけど上手い言葉を見つけられないだけなんです。言葉にならないことってすごく大事なんです。だからそれだけに、言葉をあまり責めないように。」というような内容。
言葉の表面だけを見てワッと怒りを燃やす人がいるけど、その人がどういう気持ちでその発言をしたのかまで考えられるといいよね…。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年7月15日
- 読了日 : 2021年7月17日
- 本棚登録日 : 2021年6月26日
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