借りたもの。
表紙の桜は最後に玉砕を伝える電文「サクラ」を暗示するものだった。
洞窟で火炎放射器で一掃される負傷兵。
自身の死後、家族に恩給が支払われることを望む。
補給も退路も用意されず(できず)、本部からは玉砕も許されず……
極限状態で死を望む空気が蔓延する。
燃料も食料も、医薬品もあらゆるものが底を突き、万策尽きた机の上。
暗い壕内には他に誰もおらず、黒くシルエットだけになった大佐の姿。目だけが白く浮かび上がって見える。
周りには蝿が飛び交い、描くことができない血と膿と腐臭がすることを感じ取る。
その死が近いことも……
大佐の慟哭は何であろうか……
国のためという大義名分ではなく、単純に「敗北」という無念だと思った。
無念…敗北という「失敗」を認めたくない、認められないという理由だっただろうか?おそらく当時の空気感はそうではなかったのだろう。
機密保持だけでなく、誰のせいにもできないことが解っているから自害するのだろうか?しかしそれは今となっては無責任となってしまった。
見せしめとして屈辱的な姿にされたアメリカ兵の遺体。
その遺体が持っていた薬によって命を繋ぐ、その皮肉。
単独行動をしていた小杉伍長は洞察力に優れ要領がいい…
彼が最善の行動を取っているともいえる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
国防 / 軍事
- 感想投稿日 : 2019年1月17日
- 読了日 : 2019年1月17日
- 本棚登録日 : 2019年1月15日
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