村上春樹の小説は理屈や論理を超えた予知能力を持つ「わたしにはわかるのよ」系の人物が出てくることが多いがこの作品はそのオンパレード。クミコ、メイ、加納姉妹、本田さん。こんな人たちに囲まれて生きてたら、自分が自分の人生を生きてる実感なんて持てやしないだろうな、、。それこそ海辺のカフカのカフカくんみたいな感じで。
巧妙な思想的順列組み合わせなんていう表現は人生をどういうルートで歩んだら紡ぎ出せるのだろうか、、。見てくれだけ良くて言ってることはどうにも薄いやつをちくりと刺すのにとっておきの言葉を手に入れた。
クミコと主人公双方に段々と秘密が堆積していく様子があまりにもリアル。香水の件もそうだけど相手に疑わしいことがあってもわざわざ詰問するのも気が引けて、だからといってそれを見つけてしまった以上心の方はどうもおさまりが悪くて。結婚生活はこういうことの連続ですと村上春樹が諭してくれているようでクスッときつつ、ゾクっとした。
他の作品の傾向からみれば家の近くにある枯れた井戸を伝って、いつものファンタジックな世界に旅をするのが大筋だろうけど道中に散らばった素敵な表現を拾いつつ、第二部、第三部も大切に読み進めていきたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年3月2日
- 読了日 : 2021年3月2日
- 本棚登録日 : 2021年3月2日
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