生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉

著者 :
  • 幻冬舎 (2017年9月27日発売)
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友人にオススメ本を聞いたら、日野原氏の「十歳のきみへ」という本を紹介された。

著者の日野原重明氏は、もと聖路加国際病院院長であり、その本を書かれた当時は95歳だった。95歳から10歳のこども達へのメッセージが綴られた本だ。

さっそく図書館に予約を入れたが、1月に予約を入れて、6月末の今日現在いまだ順番待ちの状態だ。入れた当初で64人待ちだったので、「それほど皆が読みたい本なのか」と少し驚いた。

その本と並行で、この「生きていくあなたへ」という本の存在も知り、一緒に予約しておいた。こちらは、サブタイトルが「105歳 どうしても遺したかった言葉」となっており、上記の本から10年後に出された本である。

この本は、インタビュー形式で著者から取材し、その内容を編集して出版されたようだ。そのインタビューが行われたのが2017年の1月、そして日野原先生はその年の7月に105歳で人生を終えられた。従って、本書は日野原先生が後世の人々に残しておきたいと思われた言葉のエッセンス集と言えるかもしれない。

平均寿命をはるかに超える105歳まで生きてこられたからといって、人と異なる経験を多くされているかと言えば、そんなことにはほとんど触れられていない。

特別な体験としては、赤軍派による「よど号」ハイジャック事件に巻き込まれたことと、地下鉄サリン事件で被害にあった多くの人を聖路加病院に受け入れたことが書かれていたが、それらのエピソードも含めて、人が生きていく上での本質的なことについて、深みのある言葉で終始語られていた。

著者の言葉で印象に残ったこと。
著者は、80歳から自分自身の新たな発見を意識され、105歳まで毎日、新しい自身の発見を楽しんでこられた。「生まれ変わる」というのは死んでまた生まれるということでなく、「生きながらにして生まれ変わることができる」と。死ぬのは「古い自分が死ぬのだ」と語られていた。

サンテグジュペリの「星の王子さま」から、「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目にみえないんだよ」を引用され、目に見えないもの(例えば「愛」とか)の大切さを語られていた。

命は、時間の中にある。つまり人のために自分の時間を使うことが命だと。命を使うと書いて「使命」と語られた。10歳の子どもや人々に言葉を遺そうされたことも、著者が「使命」と感じられていることだろうなと思う。

ありのままでいるためには、「あるがまま」であること。苦しい現状があっても、それをそのまま受け入れた自分であること。そして「キープオンゴーイング」が、最後まで貫かれた著者の生き方のキーワードのように思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日野原 重明
感想投稿日 : 2018年6月30日
読了日 : 2018年6月25日
本棚登録日 : 2018年6月25日

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