コロナウイルスが世界を覆う中、様々な立場の人によるコロナ禍における日記のアンソロジー。毎日テレビやネットでコロナについて連日報道される中、どうやって毎日を過ごすのか?と生活に向き合う期間はこれまでなかなか無かったと思う。声の大きな人の短い意見よりも、各人がどのように生きていて、その中で何を考えているのか、それが連動した形で読める日記というフォーマットは今の状況にぴったりだと思う。特に海外在住の日本人の日記がこれまでどの媒体でも読んでなかったので興味深かった。やはりアジア系にはコロナウイルスが中国発ということもあり人種差別が降りかかっているようだし、隣の芝生は青く見えるので他国と比べて日本はと思う場面も多いけど似たような迷走をしていたり。その地の生の声を聞けるのは日記ならではだなと思う。
 また同じ日本だとしても職業/子どものいるなし/場所/衛生的な価値観によってコロナ禍における行動基準が異なっているし、日記に何を書くのか?その選別する視点が一番興味深い。日記の醍醐味が存分に発揮されていた。マヒトゥ・ザ・ピーポーはほとんどステイトメントに近い形で独特のスタイル。日記文学としてパンチラインのつるべ打ちで特に好き。皆があきらかにおかしいなと思った日本の政策の数々に対する違和感も数か月前にも関わらず今読むと新鮮に思えるのが不思議な気持ちだった。(王谷晶の日記の政権に対する悪口は振り切れてて最高!)あと自粛生活だと基本的に家の中にいるので日記として書くことは食に関することに多くの著者が収斂していく(もしくは敢えてフォーカスしていく)ところがオモシロかった。もともと植本一子の日記を目当てに買ったんだけど個人的に興味があった作家や立場の人達の日記を読めたことが嬉しかった。本著をきっかけに各自の著書も読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月28日
読了日 : 2020年8月28日
本棚登録日 : 2020年8月28日

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