江戸の味を食べたくなって (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年3月29日発売)
3.51
  • (7)
  • (28)
  • (30)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 327
感想 : 28
4

本当は『鬼平犯科帳』とかメジャーな作品から攻めなきゃダメなんだろうけど、タイトルの茶目っ気ぶりにしてやられた。

一番にお金をかけるべきは食だという考えにシフトしつつある。お金があればまずは美味いものでも食いに行くというのが理想だけど、写真にでも残さない限り食べたものの記憶は簡単に残ってくれないのが現状。最近食べたなかで一番美味しかったものですら即座に出てこない…

その点池波さんの食の記憶は味も思い出も鮮明で、話だけで空腹になってくる。鮮明なのは時代的なものもあると思うけど、食べるとは本来噛み締めることなんだと実感した。
プロの料理人との対談は勉強になるし食べるということへの教訓にもなる。

それにしても偏食気味な幼少期から、のちにメディアが注目するレベルの食通にまでなったきっかけが太平洋戦争なのは意外というか、皮肉というか。

後半はエッセイや短編小説がパラパラと。
全体的に好きなものを寄せ集めた仕上がりで、前に聞いたエピソードが2−3回再登場することも。
小説はご自身の体験を思いっきりベースにされていた。代表作とも言える時代小説群は悲しきかな読んだことがないけど、何だか景色が心に沁み渡りもっと読んでいたくなる。

「死ぬために食べる」
佐藤隆介氏が綴ったあとがきで知った池波さんのその理念と自分が感じた「食べる=噛みしめる」がリンクしたように思えた。

自分は恥ずべき食べ方をしていないか。
今一度胸に手を当てて考えると、「そんなんじゃいけねぇよ」って声がこだました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月30日
読了日 : 2021年10月30日
本棚登録日 : 2021年10月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする