ブク友さんのご紹介で気になっていた1冊。
これまで世界の様々な国に住んできた著者(イラストレーター、刊行の2016年時点で20代)が拾い集めた、翻訳できない言葉集。
頑張れば一言で置き換えられるかもしれないが、各国特有の事情(その言葉の裏やニュアンスetc.)までは言い表せない。だから読書中は、一語一語を噛み締めるように音読した。
絵本のような構造で、各言葉は見開き2ページで紹介されている。左には著者のコメント、右には言葉とその意味・そして可愛らしいタッチのイラスト。あっという間に読破できそうだが、お正月のゆったりとした時間の中で敢えてじっくり鑑賞するのも一興である。
著者のワードチョイスも音読したくなるほどに詩的で、さすが言葉がテーマの本書に見合っている。謝辞にまで見入ったのは初めてかも。
同調できたのはイタリア語の”Commuovere”(コンムオーベレ)「涙ぐむような物語に触れた時、感動して胸が熱くなること」。
これはブク友の皆さまであれば共感度が高いのでは…?特に著者のコメントにあった「(そのような物語を)何日も思い出しては泣いたり…」というのが自分にはあるある過ぎて、思わず読む手を止めてしまった。買い物や乗車中に、感動した本や映画について思い出し泣きしてしまうアレは”Commuovere”だったのか…!
「失礼…Commuovereが来てしまって…(ぐすん)」早速今日からアウトプットしよっ!笑
文化と言語は切り離せないというのは本当で、「ザ・お国柄!」な言葉もちらほら。
マレー語の「バナナを食べるときの所要時間」とかフィンランド語の「トナカイが休憩なしで移動できる距離」なんて、そこでしか通用しなさそう。スペイン語の「場所より経験重視の旅」も流石コロンブスを送り出した国というべきか、彼らが口にすると妙に説得力がある。
本書には載っていなかったが、日本語の「せつない」も翻訳できない言葉だと思う。純ジャパニーズの自分ですら、口頭で説明しにくいし。
しかしウェールズ語に”Hiraeth”(ヒラエス)という類似した言葉があって、意味は「帰ることができない(/過去に失った)場所への郷愁と哀切の気持ち」なんだとか。ポルトガル語の”Saudade”(サウダーデ)「失ったものへの郷愁」も然り。
日本語以外にも心の機微を上手く捉えた一語があるとは、いざという時分かり合えそうだ。
自国では使い道がなさそうな表現からいつか経験していた物事や気持ちまで。著者もきっと初耳で新鮮だったり心に刺さったりして、思わず書き留めたんだろうな。
かの高野秀行氏は自身の著書で「どの言語も美しい」と曰っている。住む場所が変わっても、そこでしか出会えない日常とそこから生まれる珠玉の言葉から目を離してはいけないってことか。
- 感想投稿日 : 2023年1月2日
- 読了日 : 2023年1月2日
- 本棚登録日 : 2023年1月2日
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