じめじめとした人間関係と、雅な雰囲気が合わさって、なんとも言えない甘美さがある小説。京都らしい空気を味わえる。
雰囲気を味わう小説と思わせておいて、最後の怒涛の展開と、伏線の明かされ方がミステリー小説のそれだった。
楽園のカンヴァスのような絵が中心という話でもなく、京都という土地の魔力が感じられ、地元民としては、きちんとした「京都らしさ」を感じさせてくれたことに感謝したい作品。
こういうじめっとした人間関係と、美術文化の合わさった作品は好みだった。
美術を収集するようなお金持ちの世界がどんなものだかさっぱり想像がつかなかったのだが、この小説では美術品のやりとりや、身内の駆け引きみたいなものが楽しめて、自分とは縁のない世界へといざなわれるようだった。
世界に一点しかない作品を所有したり、新たな才能を発掘しパトロンとなったりと、富裕層のお金の使い方が大変興味深かった。
親に振り回された夫と、親子関係を断ち切ってでも自分の感性を優先させる妻と、どちらも幸せではないが、菜穂の決断は清々しかった。
京都に住む人間だが、美術や文化、京野菜や、祇園祭など、普段ただ生活しているだけでは向き合ってこれなかったさまざまなものとも向き合ってみたくなった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年1月19日
- 読了日 : 2017年1月19日
- 本棚登録日 : 2017年1月11日
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