自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実 (ブルーバックス)

  • 講談社 (2017年5月17日発売)
3.97
  • (13)
  • (12)
  • (7)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 304
感想 : 20
5

脳の話に興味があり時々その分野の本を読んできており、題名からいろんな症例を元に自閉症とはどんなものかということを紐解いてくれる内容かと期待し図書室で借りました。読んでみると、個別の症例は出てくるものの、そこに主眼があるわけではなく、自閉症というものが時代背景や政治情勢、医師や学者や製薬会社の思惑と野心、周囲の人々やメディアの反応によって、当事者も含めてその時々でどんな風に翻弄されてきたのか、そして人々の様々な活動や努力の継続によって、その中でどのようにして誤解や誤診、偏見と間違ったイメージを払拭してあるがままの状態を広く認知させようという試みが現在も続いているのか、ということを詳細に綴ったものでした。ノンフィクションならではの固有名詞の多さ、事実の羅列、専門用語の洪水にときどき睡魔におそわれながらも、大変興味深く読了しました。特に、自閉症スペクトラムの人たち(知的障害でも精神疾患でもない、感じ方や考え方が異なる人たち)が、コンピューターとインターネットの普及によって、対人関係で生じるストレスを最小限に抑えながら自らの経験や考えを発信することが可能になったことが、NT(定形脳、いわゆる「通常の感じ方考え方をする人たち」、自閉症スペクトラムの人たちの反義語)にはこれまで分かり得なかった、想像もしづらかった彼らの精神世界や感じ方に触れる入り口を作ったのだ、というエピソードが印象深かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 脳ノハナシ
感想投稿日 : 2018年3月7日
読了日 : 2018年3月7日
本棚登録日 : 2018年3月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする