緑衣の女

  • 東京創元社 (2013年7月11日発売)
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感想 : 88
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アイスランドのミステリ邦訳2作目(原作シリーズでは4作目にあたるもの)。安定の読み応え。住宅地から人骨が見つかり身元を特定するために捜査を開始するエーレンデュルと部下たち。シグルデュル⁼オーリはこんな誰も気にしていない過去の遺物を特定してなんの意味があるのか、地味で不毛な資料を調べる任務に不満たらたら、一方のエリンボルクは捜査の中で知る事になった女性たちの人生に思いを寄せ、不満を公言して憚らないシグルデュル⁼オーリにいらいら。エーレンデュルは赤ん坊を流産して助けを求めて来た娘エヴァ⁼リンドを見つけ出し医療機関に託したものの意識がもどらない日々を重ねて身も心も疲弊しており余裕がありません。人骨の身元が分かっても、それまでの経緯を思うといたたまれない気持ちになります。どんなことにも事情はあり、法だけでは裁ききれないやりきれなさ。ミステリ作品という道具を使って人間を描き出すシリーズだと思います。前作も女性に対する暴力のリアルさが読んでいて辛かったですが、この作品でも、理不尽な暴力と暴言を受け続けて心を失っていきながらも子供たちを必死に守ろうとする女性の描かれ方が非常に真に迫っており、息が苦しくなるような気がしました。訳者の柳沢由実子さんによる巻末の解説文も素晴らしいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ/社会問題
感想投稿日 : 2021年4月3日
読了日 : 2021年4月2日
本棚登録日 : 2021年4月2日

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