チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

  • 岩波書店 (2011年6月16日発売)
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チェルノブイリの原発事故の経緯は語らない。なにがまずかったのか、誰が悪いのかも語らない。語られるのは事故に巻き込まれたひとたち、遺族や、病気になった人や、故郷を失った人たちの、失われたものへ、胸をえぐられるような愛惜だ。告発でも、提言でもない本書は、だから「祈り」としか呼びようがない。

それで正しいのだろうと思う。何かがまずかったのなら、それをなんとかすればまずくはなくなるだろう。誰かが悪かったのなら、そいつをなんとかすれば問題はなくなるだろう。
そう思うのは無理はない。
でも、スリーマイルで起き、チェルノブイリで起き、フクシマで起きた。いずれ4回目が起きるだろう。世界のどこかで。
チェルノブイリの祈りは、どこに届くのだろう?

8年前に読んでいたら「でもロシアだからなぁ」とどこかで言い訳めいたことを考えていたかもしれない。それももうできない。

人々が戦争と比べるのにショックを受けた。危険地域に戻って住んでいる人の中には「戦争よりはまし」と考えているひともいる。どんだけ?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・ドキュメンタリー
感想投稿日 : 2018年2月10日
読了日 : 2018年2月6日
本棚登録日 : 2018年2月6日

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