トットひとり

著者 :
  • 新潮社 (2015年4月28日発売)
4.03
  • (47)
  • (73)
  • (25)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 519
感想 : 71

なんとなく、人生捨てたもんじゃないなと思った。

黒柳徹子は芸能人という感じがしない。なんでもない一般人のぼくでも、会えば普通に楽しく話をしてくれそうに思うのだ。天然不思議ちゃんのトットちゃんがそのまま大人になって、好奇心のおもむくまま、好きなことをして、好きなひとと遊んでいるようにみえる。そう見えるけど本当は、というのが普通の大人だけれど、黒柳徹子に限ってはそのまんま、という気がしてならない。
思い出話に登場するのは久米宏、向田邦子、森繁久彌、沢村貞子、渥美清といったそうそうたるメンバーだが、たぶん彼女は別の業界に入っても、有名無名関係なく同じように豊かな仲間たちを作っただろう。黒柳徹子が人に好かれる才能の持ち主(こういう邪気のない人を嫌うのは難しい)だというだけではなく、人を好きになる(そのために森繁久彌を叱ったりする)才能の持ち主だからなんだろうなと思う。

久米宏を除けば、語られる仲間たちのほとんどがすでに鬼籍に入っている。夢中で遊んでいて気づいたら、宵闇が近づく広い公園に一人で残されている感じ、と黒柳徹子は言う。きっとトットちゃんはやがて、ああ、よく遊んだ、と暗くなる空を見上げながら、おうちに帰るのだ。

そういうの、悪くないよな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・エッセイ
感想投稿日 : 2015年8月22日
読了日 : 2015年8月22日
本棚登録日 : 2015年8月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする