悪人 スタンダード・エディション [DVD]

監督 : 李相日 
出演 : 妻夫木聡  深津絵里  岡田将生  満島ひかり  樹木希林  柄本明 
  • 東宝
3.62
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本棚登録 : 2670
感想 : 588
5

妻夫木聡も柄本明も、名前を聞けばぱっと顔が思い浮かぶ
けれどこの映画の中で彼らは見たことのない顔をしている

光代の首を絞める祐一
レンチを握りしめ増尾ににじり寄る佳乃の父

目の前にいる人に抑えられない感情を全力で伝えようとしている時、皮膚は赤黒く、真似ようとしても真似できない表情になる
このシーンを見た時に「あぁ、劇場に観に行けば良かった…」と後悔した
あの表情を大きなスクリーンで見たかった
「泣くな!」と怒鳴られ、それでもこらえきれず泣く宮崎美子の演技も見ていて涙するほどすばらしかった

祐一の目の前で佳乃が増尾の車に乗り込み、去った後のあの音
ざわざわと不吉な音を立てる胸、馬鹿にされた、なめられてる時のいやーな気持ち
あの金属音が鳴って、この不穏な気持ちとこれだけマッチする音があるのか、と驚き、妻夫木聡の顔筋の動かし方に感心した
振り払おうと一瞬試みるも、振り払えずまた同じ表情に戻る
たった一瞬の間に浮かんだ考えがあの表情に全て出ていた


この映画を見ている間、「それでも」という言葉がずっと頭から離れなかった
性格の悪い女、それでも親にとっては大事な娘
ぱっとしない暗い青年、それでもお年寄りの世話をする優しい孫
見ているだけで胸くそが悪くなる大学生、それでも金は持っているぼんぼん
産まれた土地から離れていない地味な女、それでも幸せを求め本気で祐一を愛する女
この映画の登場人物だけじゃない、すべての人が抱えている「それでも」という矛盾
恋人だけでなく、親や友達に対して誰しも「それでも」を抱えているのではないだろうか
人を愛するということは、その矛盾も含め丸ごと受け入れることなのかもしれない
祐一は人殺しなのだと改めて口にしながら、祐一が見せてくれた光を思い出した光代のように

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2013年11月16日
読了日 : 2013年10月24日
本棚登録日 : 2013年10月24日

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