仕事がテーマのアンソロジー。
いずれも2010年に書かれたものなので、リーマンショック後の状況を匂わせるものが多いですが、仕事、会社については普遍的な問題もあり、今の時代に読む価値もあると思いました。
普段読まない作家さん、あまり好きではないと思っていた作家さんも含まれていましたが、異なる雰囲気の作品はどれも読みやすく、まさに世の中にはいろいろな仕事があるものだ、と思いました。
いわゆる「就職氷河期」世代の私は会社員らしい仕事の経験は少ないので、石田衣良さんの『ハート・オブ・ゴールド』のぐなぁさんの
「ぼくには先輩も後輩もいない。入社式も、新歓コンパも、研修も受けたことがない。ぼくは思うんだけど、富はただの金だけじゃなくて、社会のなかで積んでいく経験でもあるんだよ。人といっしょに働ける。たくさんの人と関係を続けられる。そういう社会的な富っていうのがあるんだ」
という言葉が心に響きました。
津村記久子さんの『職場の作法』の中の『小規模なパンデミック』は、2010年の作品とは思えず、2020年3月ごろを思い出しました。
その他気になった言葉―
重松清さんの『ホームにて、蕎麦。』の
「休む元気」
盛田隆二さんの作品のタイトル
『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』
そして、津村記久子さんの『職場の作法』の中の
・どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。
またそれを保ってると自分が納得できるように
振る舞うこと。
・不誠実さには適度な不誠実さで応えてもいいけ
れど、誠実さに対しては全力を尽くすこと。
- 感想投稿日 : 2023年10月3日
- 読了日 : 2023年10月3日
- 本棚登録日 : 2023年9月25日
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