夏の終わり、ロートレックの作品に彩られた郊外の瀟洒な洋館に集った将来を約束された青年たちと美しい女性たち。
優雅なバカンスが始まるかに思えたが、2発の銃声が惨劇の始まりだった……。
どんでん返し・叙述トリックミステリと言えばこれ、と言われることもある有名ミステリー。
話だけは聞いていましたが、ようやく手に取りました。
途中何となく違和感を覚えつつも(今誰が喋っているんだろう? とか、見取り図の名前の書き方バラバラで気持ち悪いなとか)、騙される快感を存分に味わえます。
えー、ちょっとずるくないかなと思う部分もなくはないですが、読み返すと伏線はたくさん散りばめられていますし、この手の構成の本で、部屋割りや見取り図を入れるのは、大胆で本当に感心しました。
一人称視点だった情景がぱっと切り替わる瞬間はやっぱり気持ちがいい。そのうちもう一度伏線を確認しながら読みたいです。
途中にカラーでロートレックのポスターが挿入されているんですが、これ何の意味があったのかな、と考えてい思ったのが、殺された住人の部屋のポスターと被害者の死にざまの様子を少し似せているのかも。腹部を2発撃たれた被害者の部屋のポスターは、血痕にも見える飾りのついたファーストールのようなものを巻いた女性の絵「ラ・ルヴュ・ブランシュ」。頭部を打ち抜かれた被害者の部屋には、赤い羽根飾りが広がる血にも見える帽子を被った「ジャヌ・アヴリル」の絵、みたいな。
3人目だけ少し微妙な感じですが。
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この本が気に入ったら、やはり王道の『十角館の殺人』(綾辻行人/講談社文庫)も読んでほしいです。今なら漫画版も出ていて、そちらも美麗イラストでおすすめ!
- 感想投稿日 : 2023年10月1日
- 読了日 : 2023年10月1日
- 本棚登録日 : 2023年10月1日
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