さいはての彼女 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2013年1月25日発売)
3.85
  • (463)
  • (942)
  • (596)
  • (76)
  • (12)
本棚登録 : 9915
感想 : 789
5

この連休どうやって無駄に過ごそうか企んでいたのですが天気は下り坂で良くないし、おまけにぎっくり腰になってしまって山行き諦めました。
小屋でくつろぎながら読もうとザックにしのばせてあった文庫本「さいはての彼女」を取り出してめくることにしました。山に持っていくには気にならない重さの4遍からなる短編集なんです。

久しぶりに読む原田マハさんの作品なんですが、心地よい風が吹き抜けていくような感触に、じんわりしみ込んでくる読了感。今にも泣き出しそうな湿っぽい天気の中にあっても感じることができました。やっぱマハさんいいですよね。
端っこ好きで、すみっこぐらしで、行き着くところは決まってこの先は海しかない陸の突き当たりが舞台になってる作品多くってっw

キャリア女性が旅に出る話が続くのですがどれもいいです。
最初は、尖った感じの女社長が主人公ですが、旅で知り合ったバイク乗りのイカした少女ナギちゃんに拐われちゃう話し、真っ赤なハーレーにタンデムして、滑走路のような1本道をどこまでも走る。独特のエンジン音を轟かせながら国道の路肩に停車してただのなんでもない場所が特別な場所に変わる。
水平線に堕ちる夕陽が一面を赤く染める瞬間。深呼吸する二人、もうこれ絶対いいやつううぅぅぅ。
このナギちゃんが明るくって人懐っこくて無茶いい娘なんですよねっw
2話目は、初めての一人旅をするOLの話、旅先で手紙を書くなんてしたことないですけど、じんわりきますね。
人生を足掻こうっていいなあ。
3話目は、タンチョウヅルを見に行った話。鶴と添い寝した話は興味深々。その後恩返しはあったんか気になりました。
4話目で、ナギちゃんのお母さんが主人公の話だけど、再びナギちゃん登場で右手を上げて親指立てて出てゆくとこかっこいいなあ。

自分で勝手に引いた線、健聴者と自分を隔つ線。そんなものどこにもないんだ、越えて行けって幼いナギに亡き父が言った言葉はいつまでも沁みてウルウルきました。
彼女の乗ってるハーレー自分で整備して「サイハテ」って呼んでるんですよw 過去に囚われない今日と明日のナギは凪じゃなく止まらない風なんですよね。

やっぱこの作品無茶いいな。山の描写は羅臼山の峠道走るところしかなかったけど、山のお供に持っていて再読したくなる1冊でした。濡れないようにジップロックに入れてザックに入れておこう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月9日
読了日 : 2023年10月9日
本棚登録日 : 2023年5月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする