僕は日本が大好きです。次生まれるとしても日本に生まれたい。
戦後の日本が戦争を乗り越えてきた人の目にどう映るかわ分からないけれど、過去何もない所からここまでの繁栄の礎を築いた先人たちの偉業は、これをいくら誇っても構わないと思います。僕らは最初から電気も食べ物もふんだんにあって、少なくとも餓えることは非常に少ない。そんな世界にしてくれたのは、この本に登場するような真剣にこの国を憂い、前進させてきた人々です。
この本では主人公である田岡鐵三と彼を取り巻く世界情勢や人々の思惑が濃密にそして駆け足で描かれています。長い本ですが、この小説の長さ位では全てを網羅する事は難しかっただろうと思います。ひたすら正道を歩む為に、周りからは異端と評される人生。曲がらないという事がどれだけ難しいかという事が、文面からだけでもぐっと迫ってきて息苦しいようでした。史実を基にした日章丸事件は、ニュースに疎い僕は知らなかったので、手に汗握って読みました。ホント知らなくて良かった。これから読む人も色々情報入れないでそのまま読むことをお勧めします。
恩人や部下たちへの深い愛情。世の中に恥じる事が無いという信念から発する高潔な魂。そして何よりも、日本の為、ひいては世界中の正しい道を歩もうとする人々の為に邁進する姿からは目が離せませんでした。学ぶとしたら強引な手腕ではなく「愛」ではないでしょうか。
さて、上巻でも言いましたが、この本はモデルになった出光社長の一代記であって、参考にするべきビジネスサンプルではありません。どう考えても博打的要素が強いし、これをみんなやり始めたらとんでもない事になるでしょう。しかも田岡商店以外が物凄く鈍重で能無しのように読めますが、実際は田岡商店の方が特殊であると思います。そう思うと、特殊なヒーローとして羨望はするけれど、日本人としての誇りの拠り所ではないだろうなと思います。何しろ足引っ張っている一番の原因は日本の政府と同業者ですからね。
ちなみに話は逸れますが、最近の誤りを一斉に集中砲火で糾弾して、その時の状況や情状に耳を傾けず、ひたすら謝罪だけを要求する今の日本社会の中では、こういう身を捨ててチャレンジする梟雄は立ちえないでしょう。この頃のマスコミは個人個人の主張が有りながら報道していたんでしょうね。今は責めるとなったら全員で責める、徹底的に人生がが破壊されるまで責めつづける。政治家や企業家がチャレンジして失敗して這い上がるなんて無理な窮屈な社会です。上がやり直し効かないんだから、末端は推して知るべしですね。
最後に描かれる元妻ユキへの回想は必要だったのだろうかと思った。自分が実際の家族だったら僕には正視に耐えない。
- 感想投稿日 : 2018年4月20日
- 読了日 : 2018年4月20日
- 本棚登録日 : 2018年4月20日
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