痴人の愛 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1947年11月12日発売)
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感想 : 1006
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途中であんまりにもむせ返って読むのが辛くなったけれど、それは私がこの登場人物たちに頼まれても居ないのに勝手に同情なんぞをしてしまった所為で、単純に「痴人物語」として読めばこれほど耽美で奇矯で哀れな話もないな、と一笑に伏せるわけです。

なにも「純愛」だなんて謳ってないんだもの、最初から「痴人の愛」って言ってるのに。ついつい道を踏み外されると目を伏せたくなったりして、だめね。

なんせ主人公の男が女にすっかり参っちゃってるもんだから、えらく奸黠だ巨魁だなんだって言い立てられてるけど実際彼女の手口を見ているとそんなに大物にも見えないんだよね。途中から本当に外見が美しいのかすら怪しんでみちゃったよ。時代背景を無視して、且つあら筋だけ見ちゃえば本当どこにでも居る悲しい30近い童貞男のよくある女狂いっていうだけの話で。良く「悪女の代名詞」みたいに言われてるけど、私にはナオミの素質なんて世界中の女が持ってるよ!って思えて、自分達で増長させていて泣き付くあたりは男性達にばかばかしさすら感じた。なのでラストの終わり方は反って気持ちが良かったです。うんうん、あれなら愛だよ!許す!

こんなもやっとする話をここまでぞくぞくさせる性倒錯に満ちた艶麗な文学作品に仕立て上げた事に寧ろ感動。フェティシズムって人の神経を過敏にも鈍感にもするのね、とかSMも悪女も一日にして成らずだなあ、とか考えてときめきました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・その他活字(昭和以前)
感想投稿日 : 2010年7月3日
読了日 : 2010年7月3日
本棚登録日 : 2010年7月3日

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