全巻から引き続き、まだまだ混乱の極みにあるローマにおいて、混乱を収めるために「ローマ人によるローマの武力制圧」を初めて行なったのが、この巻の主役の一人であるスッラ。
結果的に対抗勢力の多くを虐殺することになり、元老院主導による共和制ローマの体制を目指すことになるのだが、その思惑は皮肉にも親スッラ派によって徐々に破綻し、崩壊していく。この巻だけでも、スッラが理想として目指した体制がどんどん壊れていくのが分かる。
元老院体制というシステムそのものが、当時の歴史と、ローマに求められる機能とに合致していなかったと言えばそこまでだが、多くの同胞を犠牲にしてまで成し遂げようとした体制が、こうも脆くも崩れていくのかと思うと、2000年以上前の出来事とはいえ儚さを感じざるを得ない。
しかし、この時点で反スッラ派であったユリウス・カエサルがもし殺されていたら、歴史はどうなっていたか。ローマはこれほどまでに長く、魅力的な国家として世界史上の立場を得ることはなかったのではないだろうか。
この巻で、この先も活躍する人材の一人であるポンペイウスが初登場。生粋の武人という感じで、戦いによって成立し、自らを拡張していった時代には必ず登場することになるタイプの一人。この先、どのように活躍するのかが楽しみ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・宗教・民族
- 感想投稿日 : 2021年12月29日
- 読了日 : 2021年8月20日
- 本棚登録日 : 2021年12月29日
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