模倣の経営学 偉大なる会社はマネから生まれる

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  • 日経BP (2012年3月8日発売)
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模倣は独創の母である(小林秀雄)。
ウォールマートのサムウォルトンは「私がやったことの大半は他人の真似である」と述べている。
メタファーとは、隠喩のこと=別の世界に持っていくこと。
なぞかけで、新しい発想を生み出す。
ヤマトの宅急便は、吉野家の牛丼一筋から取り扱い荷物の絞り込み(利益率が高いものだけを扱う)を、ジャルパックから商品化をまねた。
トヨタ生産システムは、アメリカのスーパーマーケットの仕組みから考えられた。=富山の薬売りや御用聞きの対極=必要なものしか運ばない。必要なものを取りに行く(届ける)。
セブンイレブンは、アメリカから商標とロイヤリティーを売上高ではなく粗利益に対する比率で決めること、コンビニエンスストアの概念、の3つだけを取り入れて、日本的に換骨奪胎した。
フランチャイズは、ノウハウを学んだ加盟店が大量に脱退する可能性がある。セブンイレブンは、本部とつながった情報システムを作り上げて適切な品揃えを構築し本部への求心力を維持した。
GMはトヨタ生産システムをリーン生産方式としてまねようとしたが同じレベルには到達しなかった。

競争戦略は、いかにして戦わないか、を考え抜くこと。=差別化=製品サービスの差別化と事業の仕組みの差別化、がある。
UCCの事例=コーヒーといえばUCC。製品の差別化。しかし売上はコカ・コーラが勝っていた=自動販売機の数による。=インストールドベース。
キャノンの消耗品から収益を上げるビジネスモデルもインストールドベースによるもの。
遠い世界に優れたお手本を見出す。台湾の半導体ビジネスは、インドの露天商の高速な資本回転を見習ったもの。
楽天市場はストック型のビジネスモデル、キーエンスは同じような部品を使いまわしながらカスタマイズするマスカスタマイズ型。

実務では、ビジネスモデルは収益の上げ方、課金などお金の流れとしてとらえられる。学術的には収益の源泉の原理的な説明を含む。単純化して見えてきた共通点=業界を超えて参照できる。

単純にまねる=LCCのサウスウエスト航空はヨーロッパのライアンエア、アジアのエアアジアに移植された。
状況に合わせて作り変える=セブンイレブン、ドトールコーヒーなど。
新しい発想を得る=トヨタがスーパーマーケットから、ヤマトが吉野家とジャルパックから、半導体がインドの露天商から。
反面教師として模倣する=グラミン銀行。銀行マンとして実務に精通していないからできた。
横展開=ジョンソン&ジョンソンの使い捨てコンタクトレンズのアキュビュー。精度を落として大量生産した。社内モデルであっても、外部の優れた企業のモデルだと言えば他の部署にも広がりやすい。
自己否定=オークランドアスレチックス。出塁率をもとに統計データをとって選手を集めた。高卒の将来性には過大な評価をしない。学習棄却=過去の学習や常識を捨てて無垢な状態から学ぶことが必要。

社外の成功=単純模倣、
社外の失敗=反面教師
社内の成功=横展開
社内の失敗=自己否定
代理学習の効果=ニュートン、ニトリなど
成功より失敗から多く学べる。

成功教師と反面教師がそろうことが望ましい=弁証法と同じ。二つの反した命題を掲げてより高い次元でその違いを融合する。グラミン銀行の例。

ポジションを価値、活動、経営資源がささえる形=P-VAR。
何をどのように倣うのかは人それぞれ。独自の視点で咀嚼する。

ヨーロッパのカフェを模倣して、スターバックスとドトールができた。
スターバックスは優れたコーヒー豆の焙煎業者で、それをこだわりの体験として売り出す仕組み。シュルツは、カフェを立ち上げたのち、古巣のスターバックスを買収した。顧客との結びつきを失わないため、フランチャイズにはしない。
ドトールは、まず低価格を決めた。150円。一等地に出店する、スタッフの労働負担を少なくして笑顔で接客できるようセルフサービスのお店にした。
模倣というのは、とても不可がかかる作業だが、その過程で能力が高まる。これが成功のカギ。

模倣できそうでできないビジネス=KUMON。当初KUMONから分派した団体がいくつかあった。ちょうどの学習と自学自習。女性指導者。教えない学習。指導者たちによる自主研究会。教材が共通言語になっている。子供が分かる前に教えるのはNG。一斉教育では身につかない。

劇的な再逆転=
スイスの時計はクォーツ化で打撃を受けた。そこで逆転の発想でファッション性とブランド製を打ち出した。正確さがコモディティ化したため、機械式が希少になる。
大型オートバイは、男の乗り物だった。そこへホンダがシティーコミューターとしてのスクーターで席巻した。そこでハーレーは、逆転の発想で、モノとしてではなくハーレーのある生活を売る。
任天堂のファミコン。アタリ社がハードとソフトを分離。ハードの仕様をオープンにして多種多様なソフトを市場に投入させた。しかしソフトのレベルが低下。任天堂は仕組みは継承しつつ、ソフトの品質維持を第一に考えてクローズドな体制にした。生産量もコントロール。部分逆転の発想。
ゼロックスのコピー機。それまではジアゾ式こコピーは、消耗品で儲ける仕組み。ゼロックスのコピー機は高い。そこでリースにして、枚数に課金した。サービスとサプライから収益を上げる直営販売方式=新しい収益モデル。
キャノンのコピー機(ミニコピア、ファミリーコピア)。ゼロックスとは逆の発想。中小企業や個人。ドラムをトナーと一体のカセットカートリッジにした。壊れる前に交換する。メンテナンスが普通の人でできる。サービスマンはいらない。

先行企業を単純にまねる。迅速であれば技術開発や市場開拓のリスクやコストを抑えつつ売上をあげられる。先行者が利益を独占する前に参入する。
後発優位戦略。ソフトドリンクのコカ・コーラ。随一の自動販売機網によって後から参入しても高いシェアを得ることができる。パナソニックはパナショップで。マネシタ電気と呼ばれた。マイクロソフトはウインドウズで。
同質化戦略。=負けないための模倣。とりあえず類似商品を出す。相対的にポジションを落とさないために。
イノベーションのための模倣。新しい商品にあった仕組を作り出す。遠い世界のお手本か近い世界の反面教師。

創造の基本は模倣であり、天才でも起業はできる。
ユニクロの発想はたくさんの人が考えたが実行したのはユニクロだけ。
1990年以降、廃業率が開業率を上回る。
逃げ切りの世代はリスクを冒したがらない=新しい芽をつぶす。

経営学の教科書よりも経営を成し遂げた本人の本を読む=『トヨタ生産方式』『小倉正雄経営学』『勝つか死ぬかの創業記』『スターバックス成功物が立ち』『ムハマドユヌス自伝』。
他者が書いた本『セブンイレブン創業の軌跡』『寺子屋グローバリゼーション』『マネーボール』『破天荒』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2023年3月20日
読了日 : 2023年3月20日
本棚登録日 : 2023年3月20日

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