あずかりやさん (一般書)

著者 :
  • ポプラ社 (2013年5月8日発売)
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毎月購入している「asta」で「明日町こんぺいとう商店街」
にあるお店の連作の1つとして掲載されていた「あずかりやさん」。

大好きなお話だったので、単行本化されてうれしい!!
「asta」に掲載されていた1話目を始まりに
あずかりやさんの4話の新作とエピローグで成り立つ連作短編。

店先の「のれん」やガラスのショーケース、自転車、オルゴール
と、人ではなく物からの視点で多くが語られる物語。

明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある
のれんには藍染にしろぬきで「さとう」と優しい字で
書かれてあるけど、本当のお店の名前は「桐島」。

和菓子屋さんだった頃のそのままを残しているあずかりやさん。
ガラスケースの向こうに小上がりがあり、その六畳間の片隅の
文机で大きな本を開いて読んでいる店主。
店主の横に置かれた、ふっくらとした座布団の上には白い猫の「社長」。

生まれてすぐ死の淵にいた猫の「社長」。
その社長を手でくるみ、温め、店主の手のひらから
花のつぼみをひらくようにして生まれた
こんぺいとう生まれ、こんぺいとう育ちの社長。
あだ名は「ポーチドエッグ」。

1日百円でどんなものでも預かってくれる「あずかりや」さん。
聞かれるのは預かる日にちとナマエだけ。
理由や中身、その人の人となりは目の見えない店主の
あずかり知らぬところで、商売が続いている理由の1つ。
純粋に預かることを仕事としている。
期限が過ぎたものは、売れるものは売り、使えるものは使い、
処分すべきものは処分する。

あずかりやさんにやって来る人たちは
大なり小なりなんらかの問題をかかえ、それを棚上げするために預けにくる。

預けたものを取りに来る人、来ない人。
戻るも戻らないもその人の意思で、店主はただただ待つのが仕事。
いつまでも変わらず待ってくれている、
「あずかりやさん」はみんなの帰る場所。

「星の王子様」の本の中で宇宙旅行をし、
社長と一緒に暗闇に美しく幸せな光を見た店主。
最後に吹いた風が、店主と社長にとって幸せな風だと信じたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ■ 大山淳子
感想投稿日 : 2013年6月13日
読了日 : 2013年6月13日
本棚登録日 : 2013年6月13日

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