株の不正操作により大金を騙し取られた数学者のスティーブンは、自分と同じように大金を失った医者のロビン、画廊経営者のジャン・ピエール、イギリス貴族の御曹司ジェイムズに声をかけ、それぞれが計略を練って騙し取られた百万ドルをとり返すことを提案する。びた一文負けることなく取られた分を取り返す、倍返しではないが、まさに半沢直樹の世界である。
4人それぞれに得意分野があり、バラエティに富んだ仕掛けが施されるのも楽しいし、素人集団なので標的の予想外の行動にあたふたするのもおかしい。特にジェイムズはなかなか自分の計画を決めることができないうえ、一人だけちゃっかり美人と懇ろになったりして、本当に大丈夫なのか、とハラハラさせるが、最後は気持ちよいくらいの逆転ホームランをぶっとばすのである。
どろどろした殺人事件は起こらないし、標的の億万長者ハーヴェイ以外悪い人も出てこない。さらにハーヴェイ自身も騙されていることに気づかずいい気持になって金を出すので、誰も傷つかない物語である。
本作の著者、ジェフリー・アーチャーは、主人公たちと同じように株の投資に失敗して百万ドルを失い、生活費を稼ぐためにこの小説を書いたのだという。まさに小説を地で行くような体験をした著者だからこそ、躍動感あふれる生き生きとしたストーリーを生み出すことができたのだろう。
暑くてじめじめした日が続き、やる気が起こらない。こんな時にスカッと読める無条件に面白い本としておすすめの一冊である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外の小説
- 感想投稿日 : 2021年7月19日
- 読了日 : 2021年7月12日
- 本棚登録日 : 2021年7月19日
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