ST 化合 エピソード0 警視庁科学特捜班 ST 警視庁科学特捜班 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2014年6月13日発売)
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感想 : 10
3

・舞台は1990年。バブルが崩壊し、まだDNA鑑定の精度が低かった時代。
・主人公は若かりし頃の菊川(本編の百合根と同い年ぐらい。青い)。三枝なんかは出てくるが、STメンバーの出番はなし。STと言いながらもST要素は皆無のわりと硬めの刑事小説
・公園で発見された刺殺体を巡った事件。現場にやってきた検察官が問題の始まり
・今回の無能枠は現場に出てきた検察官。病気で余命幾ばくもない恩師にいい所を見せるために証拠を切り貼りして無理筋の犯人を勾留。自白させて起訴しようとした。作中最大の敵。ST史上最強の無能。ラストでフォローされているが、読んでる最中はこいつへのイライラが止まらなかった。とにかく無能
・菊川のバディとなったベテラン刑事のいぶし銀が心地よい。三体のダーシーを彷彿させる良キャラ。一見無気力な不良刑事だが、実際は有能な捜査官
・無能検察官の説得に時間がかかっているだけで事件自体は割と単純。犯人は第一発見者とキャバ嬢。最初に刺したのは第一発見者で、それを影から眺めていて第一発見者が去った後に止めを刺したのがキャバ嬢
・携帯電話がないこと。科学捜査が未熟なこと。無能検察官にバレないように捜査するための3つの悪条件で事件の進展はかなり遅め
・中盤以降は無能検察官が任意同行で引っ張ってきたサラ金業者を自白させる前に犯人を見つけるタイムリミットが設定されるのでスリリング。結果的に先に自白してしまうが、そこからの逆転劇が面白い
・被害者がバブル景気を忘れられないド屑。キャバ嬢をストーキングし、主催するパーティでキャバ嬢をドラッグレイプしようとし、その時のことを写真に取ったと虚言を吐いて自分と付き合えと脅していた。また、キャバ嬢から金も30万ほど借りていた。殺された日も、キャバ嬢と第一発見者がアフターするのを尾行していた
・最初は話をつけるだけのつもりだった第一発見者だったが、脅しに持ち出した包丁を奪われそうになり胸に刺してしまう。彼は動転してその場を去り、それを影から見ていたキャバ嬢がチャンスとばかりに刺殺する
・無能検察は最終的に己の間違いを認め、冤罪は起きずに済んだ
・三枝は今回のようなことが起こらぬよう、科学捜査の重要性を感じるようになる。これがST発足の最初の一歩

無能検察を菊川&いぶし銀刑事がざまぁするのを楽しむ作品
イライラ期間が長いのがマイナスポイントだが、派手さのない手堅い聞き込みで情報が少しずつ集まっていくのはなかなか達成感があった
無能検察を楽しめるか否かで作品の評価が大きく分かれそう

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2022年10月19日
読了日 : 2022年10月19日
本棚登録日 : 2022年10月19日

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