不時着する流星たち

著者 :
  • KADOKAWA (2017年1月28日発売)
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本棚登録 : 1092
感想 : 136
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読み出して、ああいつもの小川洋子だと思い、コンセプトのある短編集だから、『人質の朗読会』や『最果てアーケード』みたいな感じかなと読み進める。
確かに切なく、優しく、それでいて不気味で不穏な小川洋子の世界ではあるが、これは幻想的な部分が多く、いつもより共感しにくい作品だった。
共感したい人には、薦めにくい。

それぞれ特定の人物や出来事をイメージして書かれているが、納得できるものと今一よくわからないものとあり。
物語としては「肉詰めピーマンとマットレス」が一番普通で(だから、個人的には一番つまらないと感じた)、「臨時実験補助員」「さあ、いい子だ、おいで」はかなり不気味。母乳ババロアってやだわ。食べたとは書いてないけど。
イメージした人物と一番合っていると感じたのは「手違い」。
グレン・グールドは私の崇拝するピアニストなのだけど、「測量」は物足りなかった。「特別な飾りはなく、あくまでも穏やかなのに、一音一音にはひたむきな響きがあった。息をするように自然で、祈りのように切実だった。このまま身を任せていたらどこまで連れて行かれるのだろうかと、果てしもない気持ちにさせる円環だった。」(P130)とある。「円環」ということは「ゴルトベルク変奏曲」を指しているのではないかと思うが、この表現に当てはまるのは、最初と最後のアリアじゃないかな。かなり激しくアグレッシブな変奏もあるから、全てがこうではない。だったら「円環」は変だと思う。確かにグールドにはそういう演奏もある。でも、そうではない、演奏もある。そういうピアニストと括られたくないなと思った。もっともっと広く奥深く、複雑な、悪魔的なところもある人なのに。
そう考えると、他の人物のファンの人も、いや、エリザベス・テイラーはそうじゃない、ヴィヴィアン・マイアーは違う!と思うのかもしれない。私が知らないから違和感を覚えなかっただけで。
まあ、小川さんは、そう捕らえた、ということで、納得するしかない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年7月17日
読了日 : 2017年7月17日
本棚登録日 : 2017年7月17日

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