読後じわーっと味わいが残るいい短編集。読み残して長い間積んでいたのがちょっと惜しかった。
ひとつひとつの内容も面白く、凝っている。一話完結という風ではなく、余韻が残してある。その余韻が想像力をかきたてたり、不安が増したり、余情を感じたりする。
散りばめられた文学的エッセンスの数々が興深い。サリンジャーは短編の名手でもあると知る。
「バナナフィッシュにうってつけの日」…「バナナフィッシュ」って…傷跡?刺青? 出てくるドイツ語の詩の本って何だろう?
「コネティカットのひょこひょこおじさん」…女同士の会話がいい。ジェーン・オースティンの名が…。
「対エスキモー戦争の前夜」…コクトー『美女と野獣』が気になる。
「笑い男」…短編中に織り込んである詩情あふれるファンタジー物語の方もすてきだが、地の短編にも泣く。
「小舟のほとりで」…声高に言わずに、いじめとか差別があるこの世を示してくれる。
「エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに」…ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」ゾシマ長老言葉に再会。
「愛らしき口もと目は緑」…え、え、えっ。浮気の相手は電話の相手と思わせぶり。
「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」…登場人物の珍妙な日本人が不可解で芸術が偽っぽいとは複雑な気持ちになる。
「テディ」…知的オカルト・ホラー。ぞぞ、ぞー。
丹念に読んだが、感想があたっているかどうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2006年
- 感想投稿日 : 2021年9月8日
- 読了日 : 2006年12月1日
- 本棚登録日 : 2021年9月8日
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