手紙 (文春文庫 ひ 13-6)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年10月6日発売)
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弟を大学へ進学させるため、必死で働くが体を壊して働けなくなり、盗みに入った家で殺人を犯してしまった兄。
刑務所から弟へ手紙を書き続けるが、それが、殺人犯を兄に持つ弟を苦しめることになっていく‥

差別や偏見がこの世から無くなることはない。
みんな、犯罪という恐ろしいものから離れた安全な所に身を置いていたいから。
それは、無意識のうちにとる危険回避の本能のようなものなのかもしれない。

幸せをつかもうとするたびに、重くのしかかる「犯罪者の弟」というレッテル。
わかってはいても、読んでいて辛く、やりきれない気持ちになった。

大半の人が本当のことを知ると途端に離れて行く。でも、そのことを知った上で寄り添ってくれる人もいた。
捨てる神あれば拾う神ありだ。
そしてその人たちのおかげで本当に大切なことに気付き、また一歩前へ踏み出す。

本作はミステリーではなく犯罪加害者の家族を正面から描いた人間ドラマだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ヒューマンドラマ
感想投稿日 : 2023年1月16日
読了日 : 2023年1月16日
本棚登録日 : 2023年1月14日

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