さよなら、ニルヴァーナ

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年5月28日発売)
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感想 : 207

読むのが苦しかった。何度も中断し、何度も深呼吸し、そしてまた読み続けた。
なぜこんなにも苦しい物語を綴るのだろう。なにがそうさせるのだろう。そしてなぜ読むのだろう。
地獄だ。これは地獄だ。人が生まれ生きていくなかでもっとも過酷な地獄だ。窪さんはきっと血を吐く思いでこの地獄を文字にしていったはず。だから血を吐く思いの覚悟で対峙しなければ読み終えることができなかったのだ。
少年Aと彼に囚われた3人の女たち。最初に読んだときと、二度目に読んだときと、一人の少女の印象が全く入れ替わっていた。Aに恋い焦がれる少女は、Aとその罪、そして被害者、その全てを自分の中に取り込み全能の母、あるいは聖女としてそこにあると思えたのに。二読目にその聖性はまったく感じられなくなっていた。彼女の思いも、その存在も、薄く思えてしまった。なぜだろう。あぁ、そうか。私の中に激しい怒りがあったのだ。その怒りに目をつぶっていたのだ。見ないふりをしていた怒りが心のふたを開けてしまったのだ。私は母だ。正真正銘の母親だ。母親として怒りが悲しみを凌駕してしまった。被害者の母であるなっちゃんとともに深い悲しみを怒りで包み、放出してしまったのだ。この物語は私の心に深く打ち込まれた杭となる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2015年6月
感想投稿日 : 2015年6月1日
読了日 : 2015年6月1日
本棚登録日 : 2015年6月1日

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