働けど働けど将来に希望が見えない3Kの職業に就いている地方に住む日南と海斗。彼らの世界はとても狭く目の前にはいつも「死」がある。彼らの住む町にも「死」のにおいが濃く漂う樹海がある。
「そんな中で何が楽しくて生きているんだ」と問う都会から来た女。その夫との恋によって外へ外へと向かう日南の心と身体。残される海斗。
いくつも繰り返される対比。生と死。妻と愛人。老人と子供。幸と不幸。都会と地方。未来と過去。やるせない関係性の中で自分の気持ちを見失う日南と海斗。どこまで行っても平行線なのか。
窪美澄の小説にはどうしようもない人間ではなく、人間のどうしようもなさ、が描かれている。こうなるしかなかったんだ、と最後の最後に思う。彼らがもう一度人生をやり直せることがあったとして。やはりおなじ人生を選ぶんじゃないか、と思う。男と女が出会い、どうしようもない渦に巻き込まれていくその様に強く共感した。
誰かにそばにいてほしいと思うこと、そばにいてほしい誰かに手を伸ばすこと、伸ばした手を握り返してもらえること。今の私は何に、誰に手を伸ばすのか。誰の手を握るのか。
読書状況:読み終わった
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2018年4月
- 感想投稿日 : 2018年4月19日
- 読了日 : 2018年4月19日
- 本棚登録日 : 2018年4月19日
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