映画を撮りながら考えたこと

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  • ミシマ社 (2016年6月8日発売)
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レビュー『映画を撮りながら考えたこと』(是枝裕和)
ここ数年映画を観るようになった自分ではあるけど、本当に、「観る側の世界の広さによって見えてくるその映画の世界の広さも違ってくるのだなぁ」ということを考えさせられることが多くなってなかで、手にとった一冊。
この本を読む(‘読む’という感覚じゃなくて、是枝監督が上映し終えた映画のスクリーンの前で語っているのを聴いていたという感じのほうが適切かもしれない)ことによって、映像の作り手側の姿に触れることができた、きっとこれから映画を観るときは、無意識のうちに作り手側の想いや意志を感じる感性が疼いてくれることだろう。

さて、もう少し具体的にこの本で印象に残ったことを挙げておこうと思う。まずは‘日本の映画産業’を‘世界の映画文化’との比較のなかで見つめていた箇所、しかもそれを映画監督の目を通して眺められたこと。世界各都市で開催されている‘映画祭’、今までは、何となく映画作品の箔をつけるためのイベントくらいにしかとらえていなかったけど、世界各都市のマイナーなものから、メジャーなものまで多くの映画祭を巡ってきた監督の経験から、眺めた‘日本という国が映画に向き合う姿’が、時間軸でいうものすごく近いところ、文化の深度でいうと本当に浅いところに置かれているように語っていた。
是枝監督が巡って眺めた各都市での映画ファンとの触れ合いや映画関係者を受け入れる街の人々のもてなしのここち良さは読んでいる私にも伝わってきた。

そして「悪いのはみんな萩本欽一である」という強烈な番組タイトルで、テレビ番組の制作経験と、その可能性を語った箇所は、
「欽ちゃんはそんなことをしでかしていたのか」という驚きと、「そういう見方をすれば確かに欽ちゃんはテレビを素人化し、「芸がなくても出られらる場所」に変えてしまったという、エンターテイメントとしてのテレビ変遷の謎解きをしてくれる。

是枝監督が制作した、ドキュメンタリー、テレビ番組、映画を時系列に並べ、制作のエピソードを添えながら、映画の面白さ、可能性を‘作り手’の側から語る後半部分。それらをとおして、もう一度観てみようと思った映画は
『歩いても、歩いても』(安倍寛)
『奇跡』(前田前田)
『海よりもまだ深く』(安倍寛)

まだ観ていないのだが是非観たいのが
『幻の光』(江角マキコ のデビュー作)
『DISTANCE』(伊勢谷友介)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年4月7日
読了日 : 2018年4月6日
本棚登録日 : 2018年4月1日

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