やさしい訴え (文春文庫 お 17-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2004年10月8日発売)
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『やさしい訴え』
ラモー作曲のチェンバロの曲だ。

『やさしい訴え』は新田氏と薫さんを静かに結びつける。瑠璃子さんがいくら新田氏と物理的に近づいたとしても。
三人とも傷を負っていた。演奏恐怖に陥ってしまったピアニスト。婚約者を結婚直前に亡くした女性。夫の不倫で居場所をなくした女性。
瑠璃子さんの発する嫉妬にまみれた言葉が、宙を舞う。その訴えは当たり前の感情だと思うけど、発すれば発するほど新田氏との距離が遠ざかっていくように思える。
やはりきっぱりと瑠璃子さんは失恋した。
瑠璃子さんに居場所は見つかるのだろうか。
薫さんの純粋な真っ直ぐさがドロドロを消していく。
かなわないんだな。
瑠璃子さんが切ない。

小川洋子さんの世界に浸って
もの悲しい幸福感と
透明感を味わった。

これから
ラモーのチェンバロ曲を聴こう。
『やさしい訴え』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小川洋子
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月24日
本棚登録日 : 2024年3月24日

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