夜明けの街で (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2010年7月23日発売)
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本棚登録 : 20681
感想 : 1600
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渡部の視点で語られていく物語は、淡々と不倫や過去の事件の真相がわからない渡部の苦悩を描いていく。
長期間、心の奥底に秘密を抱えたまま生きていくことは並大抵ではない。
必死に守ってきた闇の深さに、いつしか秋葉自身もその闇に侵食されていく。
人を信じられず、それでも信じたいと思う心はあって・・・。
結婚という形態において、ただ真っ正直であればいいというのは少し違う気がする。
妻の有美子が何かをしたわけではない。
原因はすべて渡部にあるにもかかわらず、苦しまなければならない有美子の押し殺した怒りが怖かった。
穏やかに振る舞えば振る舞うほどに、破壊されたサンタに込められた想いが怖ろしい。
時効が迫る中、揺れ動く登場人物たちの心情と事件の真相は読みごたえがあった。
流されるようにした選択も、思いを決めてした選択も、結局はすべてが自分自身へと降りかかっている。
できれば「あの時に戻りたい」と思わずにいられるような人生を送りたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス
感想投稿日 : 2017年3月8日
読了日 : 2017年3月8日
本棚登録日 : 2017年3月8日

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