モンスター (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2012年4月9日発売)
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本棚登録 : 15845
感想 : 1662
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女の魅力は顔だ!と言い切る極端な人は少ないかもしれないが、本音はどうだろう。
せめて、女の魅力のひとつは顔だ・・・くらいにしてくれるといいのだけれど。
多少難有りの顔でも他に魅力的なところがあればカバーできるかも、と希望が持てるから。
未帆の美に対する執念は凄まじい。
一ヶ所を直せば、また別の箇所が気になってくる。
そしてそこを直せば、また別の箇所が・・・と、結局いつまでたっても完全に満足することはない。
時間と金をかけて確実に美を手にしていく未帆。
美しくなった未帆をみて、男たちはみな未帆を手に入れようとする。
何故、未帆の本来の中身を見つけてあげようとはしなかったのだろう。
あまりに美しい外見は、それが目立つあまり、他の魅力はまるでないかのように霞んでしまうのだろうか。
ただひとり、ありのままの未帆を必要だと言ってくれた男・崎村。
もしも崎村を受け入れることができていたら、短い時間だったかもしれないけれど、いままでとは違った飾らない幸せが待っていただろうに。
でも、最後まで英介にこだわり続けたところが未帆らしい。
一番最初に自分を受け入れてくれた人。
未帆にとっては、それが何よりも一番大切なことだったのだろう。
作品中に美容整形を見破る方法・・・みたいな描写があって面白かった。
「なるほど」・・・と納得したり、「えぇっ!そうだったの!」と驚いたり。
美人の定義が語られる場面も興味深かった。

この物語を書いたのは男性の作家さんだ。
だからなのかもしれない。どことなく物悲しい雰囲気におおわれた物語のような気がする。
どこか滑稽で、だけど哀しくて切ない。
未帆の生き方をどこかで馬鹿だなあと思いながら、こんなふうにしか生きられなかった未帆が愛しくなってくる。
未帆の最後の微笑は、自分の生きてきた時間が十分に報われた満足の微笑なのだろう。
たとえ死んでしまった未帆をひとり残し、愛した人が逃げてしまったとしても・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般小説
感想投稿日 : 2017年2月27日
読了日 : 2017年2月27日
本棚登録日 : 2017年2月27日

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