硝子戸の中 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年7月22日発売)
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「死は生よりも尊(たっ)とい」p23

晩年、漱石先生が辿り着いた死生観だそうです。
しかし、人に対しては
「もし生きているのが苦痛なら死んだら好いでしょう」と助言ができない自分をもどかしくも思っている。そうして
「もし世の中に全知全能の神があるならば、(中略)私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る」ほど苦しんでいる。p97
これは本当にただの随想集なのでしょうか?? 

****
読んでいる間ずっと『こころ』の続編?!という思いを禁じ得ませんでした。(本作は『こころ』の後に書かれたそうです)

「不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう」p98

漱石=〈先生〉が硝子戸の中から見つめていたのは、電信柱でも社会でも他者でもなく、紛れもない自分の「こころ」だったのかもしれません。
本書は『こころ』のアナザーストーリーとしても読めるでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: こころ
感想投稿日 : 2023年9月3日
読了日 : 2023年9月3日
本棚登録日 : 2023年9月3日

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