春琴抄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1951年2月2日発売)
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盲目の美しい娘、春琴と身の回りの世話をする下男佐助。三味線の師匠と弟子でもある。
春琴の美しさ、儚さがそこはかとなく文章から伝わってくる。一方で気性は激しく、気位高く、お金に厳しい。佐助を泣かせる程に体罰と厳しい指導を行う。

佐助は、仕えた最初から春琴への憧れがあり、師匠としての尊敬の念、やがて深い愛情へと変わっていく。愛おしさを表現する文章が何気なくエロい。マゾ的な性癖も感じさせる。
そんな上下関係であるはずなのに、妊娠するとは、オイオイ、どういう事か?えーっ⁈そういう事なのか?2人は否定し、ここではハッキリした事情は語られないままだ。

人から恨みを買う事になった春琴は顔に大火傷を負ってしまう。その春琴が「私を見るな」と言った為に、自らの目に針を刺し失明した佐助。あまりにショッキングだ。ヤバすぎる。
しかし、この事で2人は同じ盲人となり、同化し、より絆が深まる。ようやく肉体だけでなく心で結ばれた。(やっぱり肉体関係はあったんかーい)佐助は、不幸ではなく、幸せを得たと言うのだから、度肝を抜かれた。
そのクライマックスシーンでは、自然と涙が溢れ出てしまい、心が揺さぶられる。そこまでの愛があるのかと…。

今も大阪の町のどこかに2人のお墓がひっそりと存在しているかもしれない。
これが谷崎の耽美な世界なのか…。読後しばらく抜けきれない。
密やかで不思議な究極の愛の描き方に今後ハマりそうな予感がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月29日
読了日 : 2023年7月29日
本棚登録日 : 2023年7月29日

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