薬指の標本 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1997年12月24日発売)
3.68
  • (928)
  • (1196)
  • (1768)
  • (186)
  • (30)
本棚登録 : 11045
感想 : 1259
4

夢のような、おとぎ話のような不思議な雰囲気。静かな空気感の中、現実と幻想が入り混じる。そして、怖い。
薬指を欠損したわたしは、仕事を探すうちに不思議な標本室に出会う。依頼された物はなんでも標本にできるという弟子丸氏。イメージでしかない物、思い出も全てだ。その標本室で働く事になったわたしは、弟子丸氏と次第に親しくなっていく。ある日、彼にプレゼントされた靴を履くと、あまりにも足にピッタリで同化する感覚になる。わたしも特別な何かを彼に標本にして欲しいと願うようになり…。 

何となく、行ってはダメ、これ以上はいけないと読み手の中に危険信号が灯る。小川洋子さんの淫靡な世界。淫らだけど、品がある。
童謡の「赤い靴」を思い出した。
こんな世界に溺れてみたいとも思う。現実と夢の境界線。もう2度と出てこれなくてもそれはそれで本望だ。あちらの世界も良いかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月29日
読了日 : 2024年3月29日
本棚登録日 : 2024年3月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする