ひとりでも生きていける二人が、それでも一緒に生きていくことを選ぶことが結婚の本質なのだと、昔ある思想家が言ったそうだ。
その通り、思いやりあって尊重しあっている仲の良い夫婦があるとき、思いもよらず傷つけあってしまうことがあるのだろう。
「花車」もその一つの物語。
もうセックスを二度としたくないのだ、と夫に宣言された妻の話だ。
愛情がなくなったわけではなく、他の子に心移りしたわけでもなく、ハグやキスは今までどおり穏やかな気持ちでできるのだけど、
どうにもセックスだけは苦痛で二度としたくはないのだ、と。
どうにも処理しきれない気持ちがあれば、他の男としてもよい、とまで言われてしまう。
恋から愛に移り、このまま温かな家族を守り続け、あなたと寄り添って生きていくのだと信じている「私」は相手を責めないようにと気遣いながらも、自分を哀れまずにはいられない。
誰でもいいわけではない。あなただから抱きしめて欲しいのに。あなたとだからセックスをしたいのに。
その気持ちを他の男で満たすことなどできないのに。
吐き出しようのない濁りを、真正面から見つめてみる。
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- 感想投稿日 : 2017年3月4日
- 読了日 : 2017年3月4日
- 本棚登録日 : 2017年3月4日
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