倫敦塔・幻影の盾 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年7月14日発売)
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感想 : 57
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漱石初期の短編集 

【倫敦塔】1905年
留学中の倫敦塔観光記
英国の歴史を塔の中に感じ、戯曲「リチャード3世」・絵画「ジェーングレー」などからの発想を ブラックファンタジー的に随所に表現。観光後、現在イギリス人(当時の)に現実に戻される。興醒めして(たぶん)もう二度と行かないとか言う。
観光記でも普通には書きません。

【カーライル博物館】1905年
留学中のカーライル博物館訪問記 備考によると、味の素の発明者・池田菊苗さんと訪問しているらしい。まだ、海外渡航は珍しいから、外国で会うと仲良くなるのかしら。
たぶん、漱石はカーライル大好きに思える。見学中の表現は、案内のおばさんをあんぱんみたいだとか、ベッドをたいしたことないような事言ったり、口が悪いけど、蔵書目録を発表したりね。

【幻影の盾】1905年
アーサー王物語・北欧神話を元に、「一心不乱」を書いたらしいのだけど、前説で上手くいかなかったみたいな言い訳している。
主人公ウィリアムは霊を宿す盾を持つ。戦闘中の相手の城に恋人がいる。いよいよ戦争が始まり、恋人を助け会いたいのだが、戦火が回る。
その後からは、幻かなと思う。馬が飛んできて、それに乗って南へ走る。女神が出てきて、盾に問えみたいなこと言われて、盾の中で恋人と会う。こんな感じ?元の話を知らないので難解でした。

【ことのそら音】1905年
異質の頑張った怪談風小説。
結婚間近な主人公の周辺に起こるちょっとした怪談風出来事。ラストでほぼ全部解決して、めでたしめでたし。

【一夜】1905年
難解。「吾輩は猫である」の作中で「一夜」の事を
誰が読んでも朦朧として取り留めがつかないとか書いてあるらしい。やめてほしい、3回は読んだんですけど。人生を書いたので小説を書いたのではないと。
登場人物は、髭のある人、髭のない人、涼しき眼の女。三人で禅問答みたいな会話して、最後は、思い思いに一緒に寝ちゃう。
森鴎外の「寒山拾得」的。

【薤露行】1905年
アーサー王物語題材。擬古体。
○夢 アーサー王円卓の騎士らと試合に出発。
   騎士ランスロットは仮病を使って王妃と密会
   バレそうなので急いで試合に行く
○鏡 魔法の鏡に映るランスロット
   それを見たシャロットの女。鏡は割れる。
   ランスロットへの呪いをかける
○袖 古城に住まうエレーンは一夜泊めたランスロ 
   ットを好きになり袖を兜に付けさせる
○罪 試合は終わり皆帰るが、ランスロットは帰ら         
   ない。王妃は密通の糾弾を受ける。
○舟 エレーンはランスロット行方不明のショック
   断食自殺
   死体を乗せた舟は王妃のもとへ
ランスロット持てすぎ疑惑あり。

【趣味の遺伝】1906年 書いたのは1905年かな
これは、なかなか良いです。
主人公は一貫して、余。
日露戦争で亡くなった、尊敬していた先輩を思い出す。戦争で、目を引く活躍をしただろうと想像する。ここの表現が、生き生きとしすぎて物悲しい。
後半は、先輩の好きだった女性を探しだすという感じ。

だいぶ時間かけて読み切ろうとは思ったのだけど、英文学に無知で難解すぎました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年3月25日
読了日 : 2022年3月25日
本棚登録日 : 2022年3月25日

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